2017年8月27日日曜日

札幌駅の配線について考えてみる(5)

 前回の記事では,快速エアポートの毎時5本運転を想定し,その際組まれる千歳線のダイヤパターンが二通りに絞られることを中心に記述した。今回は,これを函館本線(小樽~旭川)のパターンと接続させる。札幌駅の配線問題に立ち返り,「札幌駅到着列車は3から5番線のみを使用」でダイヤパターンを作成できるかどうか,考察を行う。
 結論から言うと,「可能」である。しかし,列車遅延時に運用するには非現実的なものとならざるを得ないため,列車遅延時に運用するために必要性の高い設備を「どの場所に」「どのようなものを」置くか,併せて考察する。

 まず第一に,毎時4本から5本に増発するエアポート号の行先についてである。現在15分間隔で運転されるエアポート号を最小の運用数で回すためには,以下のように合計10編成必要であると考えられる。
小樽10:00→11:12新千歳空港11:30→12:47小樽13:00
3時間÷30分間隔=6運用
札幌10:20→10:57新千歳空港11:15→11:52札幌12:20
2時間÷30分間隔=4運用

 一方,増発するエアポート号は毎時1本である。エアポート用車両発注 JR、増発に向け24両なる記事が正しければ,一周最大4時間かけることが可能である。ここでは,新規に増発するエアポートを小樽方面に(区間快速として)直通させ,現在毎時20分に小樽駅を出ている各駅停車を置き換えるものとして想定する。こうすることで,札幌~手稲間の快速は毎時5本となり,12分間隔で運転できる。

 次に,函館本線の旭川方面列車が,毎時何分に札幌駅を出発し,毎時何分に札幌駅に到着する必要があるか整理する。

表1:函館本線旭川方発着時刻

特急 (区間)快速 各停
札幌駅到着 25,55 03or13,43 19,3X,53
札幌駅出発 0,30 15,40 03,23,46

 現在,函館本線の区間快速は札幌を境に東西に分割されているため,小樽方面の区間快速は毎時何分に到着・出発しても問題ない。そのため,自由にダイヤを設定できるように見えるが,以下のような問題が生じる。
 先に大きい問題から述べるとすれば,「札幌~手稲に待避設備が一つも無い」ことである。小樽方面列車が3番線から5番線の3本しか使用できない制約からすると,旭川方面から札幌駅に到着した各駅停車や区間快速が,ただちに小樽方面に発車する必要がある。これに加えて,後ろの快速列車を邪魔せずに走行するためには,表1を見ながら,小樽方面の快速と各停を毎時何分に出すかあらかじめ決めておく必要がある。上記毎時5本の区間快速・普通列車の中から毎時二本小樽行きを出そうとすると,毎時20分・56分に小樽行きを快速として出すのが自然である。残り3本(毎時8分・32分・44分)はエアポート号を小樽行きとして出すことになるだろう。
 なお,表1の制約はよく見ると,札幌駅到着時刻の制約の方が厳しいのだが,原因は厚別駅で上り特急列車の通過待ちが出来ない(※厳密には出来ないことはないが,特急列車の大幅な減速を伴う)ことにあると考えられる。
 次に,エアポート号が札幌駅に停車している時間の長さを決めるのだが,空港発のエアポート号は白石駅~手稲駅を無待避で走り抜ける必要がある。12分間隔となると手稲の手前で各駅停車に追いついてしまうため,ここから逆算してエアポート号の札幌駅停車時間を6分取る。
 ここまでの内容だけで,小樽方面のダイヤは「ほぼ」図1の一通りに固定されると考えられる。

図1:小樽方面パターンダイヤ図
 算用数字は「札幌駅のプラットホーム」を表すが,一部8番線に直接付けているものが見受けられる。これは,札幌駅桑園側の引き上げ線が1本しかなく,そもそも不足しているだけでなく,これを快速エアポートに充当すると,普通列車が折り返す引き上げ線が無くなってしまうため,無理矢理8番線の上でそのまま折り返させている。琴似駅にも引き上げ線があるが,現状カムイ・ライラック号が使用しており,本記事でもカムイ・ライラックが使用することを想定する。
 一方苗穂側はと言うと引き上げ線が1本あり,かつ苗穂駅構内にも2本あるのだが,札幌駅で方向転換している間に次の列車が来てしまう状況では正直使いづらい。本記事では苗穂側の引き上げ線を,千歳線の特急列車に充当し,平面交差による支障を少しでも低減する方向で考えている。これには,手稲回送をなるべく減らすという効果もある。現に,図1では一部の特急列車(毎時30・54分)で手稲回送のスジを確保できておらず,一本後ろのスジに乗せるか,やむを得ず苗穂側に回送するか,いずれかを強いられる。もっとも,手稲回送の設定自由度が低い原因を突き詰めて考えると「札幌~手稲に待避設備が一つも無い」に尽きる気がしてならないのだが…
  これを基に,小樽・手稲方面を発車する列車を重ね合わせ,ダイヤパターンを作成する。エアポート号が新千歳空港駅に着く時間帯によって2通りに場合分けでき,小樽→札幌の快速列車5本の「どれをエアポート号,どれを岩見沢方面直通」にするかで5通りに場合分け出来るため,理論上は10通りのダイヤが考えられる。10通り作る作業には正直に言って骨が折れたが,折り返し運転の効率が良いものを以下に2つ抜粋し記載する。
図2

図3
 図2・図3案にはそれぞれ長所・短所があると考えられ,以下表2にまとめる。

表2:図2・図3案比較表

図2 図3
長所 ○新札幌駅付近で快速同士がすれ違うため,新札幌駅付近の平面交差にあまり関係なく貨物列車を入れやすい
○南千歳駅付近で特急同士がすれ違うため,南千歳~駒里(信号場)で詰みが生じにくい
○新札幌付近の平面交差に関わらず,貨物列車を設定できるスジが確保できる
○快速列車の小樽・札幌・新千歳空港駅折り返し時分が可能な限り長く取られていて,遅延に比較的強い
短所 △平面交差の関係で,空港行きのエアポートの遅延が,そのまま空港発のエアポートに伝播する △南千歳~新千歳空港の線路が常時埋まっている状態になるので,千歳線の札幌方面の遅延が,そのまま空港行きのエアポートに伝播する

 これらパターンで考える限り,札幌駅の到着ホームは3~5番の3本でも可能という結果となる。しかし,きわめてダイヤ設定の自由度が低い状態なので,遅延したときまで含めて考えると依然として以下が課題として残っている。

○札幌~手稲に待避設備が一つも無い
○札幌駅桑園側の引き上げ線が不足している
○厚別駅で上り特急列車の通過待ちが出来ない

 札幌駅新幹線ホームの現駅1・2番ホーム案を支持するには,以上の課題を解決する方向へと適切に誘導する必要がある。特に上の2点は致命的であり,発寒駅もしくは発寒中央駅,あるいはその付近の改良工事は「現駅案」実現のために必須と見て良いだろう。

 札沼線との交差支障問題,札幌駅での縦列停車,札幌駅への亘り線追加等の問題について記述できていないので,体力気力が残っていれば,次回また筆を起こそうと思う。

  

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